親の借金が分かったらすること:調べ方と比較、相続放棄の判断手順
結論:親の借金が分かったら、片付けや返済より先に期限を確認し、「調べる→比べる→決める→申述する」の順で進めます。 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する手続きです。調査が間に合わなければ、期間の伸長を申し立てる方法があります。出典:裁判所「相続の放棄の申述」
督促状が届いた、裁判所から通知が来た、通帳に知らない会社への引き落としがある。親の死後にこうした手掛かりを見つけても、すぐに「子だから払わなければ」と決める必要はありません。まず借金と財産、すでにした行為を整理しましょう。相続放棄の判断前に、家財を売る・捨てる、預金を引き出して使うといった行動は控えてください。
制度・手続きは2026年11月3日に公的資料等を確認しています。この記事では、借金の有無を調べ、相続の選択肢を専門家と検討するための一般的な手順を扱います。借金の減額や任意整理など、債務整理そのものは専門家に相談する領域です。
この記事で分かること
- 借金を調べる五つの経路と、信用情報の開示だけでは分からないこと
- プラスの財産との比べ方と、単純承認・限定承認・相続放棄の違い
- 期限内の申述、放棄後の連絡と財産の引き継ぎで確認すること
漫画①「督促状が届いたら、まず期限から」
漫画は準備中です
最初にすることは、3か月の起算点と通知の期限を確かめること
相続放棄の期間は、単に「亡くなった日から」でも「借金を発見した日から」でもありません。民法915条が定める起算点は、自己のために相続の開始があったことを知った時です。死亡を知った日、自分が相続人になったことを知った経緯、督促状を受け取った日を、別々に記録してください。出典:民法915条
たとえば、親の死亡と自分が相続人であることを以前から知っていたなら、後で借金を見つけたからといって、当然にその日から3か月になるわけではありません。すでに時間がたっている場合も、自分で「もう無理」と決めず、知った経緯と調査状況を弁護士に伝えます。期限後の申述が認められるかは、事情に応じた判断が必要です。
最初のメモには、親の氏名・最後の住所、死亡を知った日、相続人の候補、届いた書類、行った処分や支払いを書きます。起算点に迷うなら、早い日を前提に相談日を確保しましょう。家族が相談を予約しただけでは、自分の期限の手当ては済みません。
裁判所の通知には、相続放棄とは別に対応すべき期限や期日があります。支払督促や訴状を「放棄するつもりだから」と放置せず、受領日と書類一式をすぐに弁護士へ見せてください。差出人が不審なら、通知に書かれた番号だけに頼らず、裁判所の公式窓口で実在する事件かを確認します。
親の借金の調べ方は五つの経路を組み合わせる
一か所の照会で借金全体が判明するとは限りません。郵便物、信用情報、口座履歴、契約書、保証や滞納を並行して確認し、分かったものと未確認のものを分けます。
| 調べる経路 | 探す資料・確認する相手 | メモする内容 |
|---|---|---|
| 郵便物 | 督促状、債権者の通知、裁判所の書類 | 受領日、債権者名、契約番号、対応期限 |
| 信用情報 | CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター | 登録会社、契約の内容、開示日 |
| 銀行口座・通帳 | 通帳、取引明細、金融機関への照会 | 引き落とし先、日付、金額、不明な摘要 |
| 契約書・明細 | ローン契約書、カード明細、借用書 | 元の貸主、残高の基準日、担保・保証 |
| 保証・滞納 | 保証契約、事業資料、納税・料金の通知 | 主債務者、請求条件、未納期間、照会先 |
← 表は横にスクロールできます →
1.郵便物は封筒ごと残し、請求の内容を確かめる
督促状は捨てずに、受け取った日が分かるように保管します。請求額だけでなく、誰が誰に貸したお金か、元金・利息・遅延損害金の区別、債権譲渡の記載があるかを確認してください。
同じ借金について元の貸主と回収会社から通知が来ることも考えられます。会社名が違うだけで別の借金として足さず、契約番号や元の契約先を照合しましょう。債権者へ問い合わせる際は、資料を確認したいことを伝え、返済の約束や和解書への署名は先にしません。請求が正しいか争いがあるなら、交渉は弁護士に相談します。
2.信用情報は3機関の「故人についての開示」を利用する
CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターは、故人の情報を相続人等が郵送で開示請求する手続きを案内しています。親のスマートフォンで本人として申し込むのではなく、それぞれの専用案内に従ってください。
| 機関 | 故人の情報を請求する人・方法 | 書類準備の入口 |
|---|---|---|
| CIC | 法定相続人による郵送開示 | 法定相続人用申込書、本人確認、相続関係と死亡を確認する資料 |
| JICC | 法定相続人や二親等以内の血族等による郵送開示 | 故人用申込書、請求者の本人確認、死亡と関係を確認する資料 |
| 全国銀行個人信用情報センター | 法定相続人やその法定代理人による郵送開示 | 該当する申込書、本人確認、死亡と相続関係を確認する資料 |
← 表は横にスクロールできます →
戸籍等で「亡くなったこと」と「請求する資格があること」を示すのが基本です。ただし、原本か写しか、発行からの期間、必要な戸籍の範囲は共通ではありません。各機関の最新案内から申込書を入手し、手数料の支払方法、返却の有無、郵送先まで個別に確認します。出典:CIC「郵送で開示する」・JICC「二親等以内の血族 法定相続人等による開示」・全国銀行協会「郵送による開示手続」
開示に載っていないことは、借金がない証明にはなりません。 CICは登録元の会社が死亡を確認すると契約情報を削除すると案内し、全国銀行個人信用情報センターも死亡を理由に情報が削除される場合があるとしています。個人間の借入れや税金など、信用情報だけでは拾えないものも調べましょう。出典:CIC「法定相続人開示の手続きにあたって」・全国銀行協会「郵送による開示手続」の注意事項
開示を申し込んでも、相続放棄の期間が自動的に止まるわけではありません。郵送・書類の補正・結果の照合に使える時間を考え、期限が近ければ結果待ちと専門家への相談を並行させてください。
3.銀行口座・通帳から、返済先の手掛かりを探す
通帳や取引明細では、毎月のローン返済、カード会社への引き落とし、不明な振込先を探します。見慣れない摘要は金融機関に確認し、取引履歴の取得に必要な相続関係書類を聞きましょう。調査のための照会と、払戻しや解約は分けて進めます。
毎月の引き落とし額は残債総額ではありません。借入先が分かったら、相続人として必要な資料を示し、残高・利息等の基準日、契約内容を確認します。通帳に返済が見つからなくても、別口座や振込による返済の可能性を未確認欄に残します。
4.契約書・明細で、残高と担保の有無を確認する
ローン契約書、カード利用明細、借用書、事業用の帳簿を探し、資料を撮影して保管します。カードを持っているだけで借金ありとは決めず、利用残高や契約の状態を照会してください。住宅ローンなどは担保の資料も一緒に確認します。
古い契約書の借入額を、そのまま現在の借金として計上しないことも大切です。「契約当初の額」「届いた請求額」「基準日現在の残高」を分け、返済済みか確認できていないものは断定せずに残しましょう。
5.連帯保証と、税金・公共料金の滞納を見落とさない
親自身が借りたお金に加え、他人や会社の借金の連帯保証人になっていなかったかを調べます。保証債務も相続の対象となり得るため、「今まで請求が来ていない」だけで除外しません。契約の種類や内容によって承継する範囲が異なるので、保証契約書と主債務者の状況を専門家へ示してください。出典:民法896条・保証債務に関する446条以下
納税通知、督促、電気・ガス・水道等の未払い明細も確認します。親の生前の未払分と、死後に自分が契約して利用した分は分け、誰のどの期間の債務かを照会しましょう。「親名義の請求」と「自分に支払義務がある請求」を混同しないための整理です。
図解借金の調べ方・五つの経路
イラストは準備中です
プラスの財産も調べ、金額と未確認事項を比べる
借金だけでは判断材料が足りません。預貯金、不動産、有価証券、車、保険契約なども一覧にします。不動産は固定資産税の通知だけで換金額を決めず、名義、共有持分、担保、売却可能性を資料や査定で確認しましょう。査定を聞くことと、売買契約を結ぶことは別です。
生命保険は契約者・被保険者・受取人を確かめます。指定受取人が受け取る死亡保険金など、相続財産と別に扱われるものがあるため、すべてを遺産の預金と同じ欄へ足さず、契約内容を保険会社や専門家に確認します。税務上の扱いも相続放棄の判断とは分けて確かめてください。出典:法テラス「相続放棄した場合、生命保険金は受け取れないのですか」
| 比較するもの | 確認済みの資料 | 未確認なら残す内容 |
|---|---|---|
| 預貯金・証券 | 残高や取引の資料 | 別口座、保有銘柄、残高の基準日 |
| 不動産・車など | 名義、査定、担保の資料 | 売却可能性、共有者、必要な費用 |
| 借入れ・未払金 | 残高回答、請求明細 | 利息等、二重計上、争いの有無 |
| 保証債務 | 保証契約、主債務の資料 | 請求の可能性、承継する範囲 |
← 表は横にスクロールできます →
比較表は「資料で確認できた額」「概算」「不明」に分けます。不明な保証債務をゼロにしたり、家の査定額をそのまま手元に残るお金と考えたりすると、比較が崩れます。家の維持や手放す費用まで見通す場合は、実家じまいの総費用マップで支出項目を確認してください。ここでも、処分の契約は相続の判断を確認した後です。
単純承認・限定承認・相続放棄の三つから検討する
相続には、権利義務を受け継ぐ単純承認、相続で得た財産の範囲で弁済する限定承認、権利義務を受け継がない相続放棄があります。金額の比較と未確認事項をそろえた上で、次の分岐を考えましょう。出典:政府広報オンライン「知っておきたい相続の基本」
| 選択肢 | 一般的な検討場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 単純承認 | 財産と債務の状況を把握し、義務も引き継ぐと判断する場合 | 債務について、相続財産だけを責任の限度とする仕組みではない |
| 限定承認 | 債務が不明でも財産が残る可能性があり、制度の利用を検討する場合 | 共同相続人全員での申述と、その後の清算が必要 |
| 相続放棄 | 債務超過が見込まれるなど、権利義務を受け継がない方向で検討する場合 | 家や預金も含めて放棄し、借金だけを外すことはできない |
← 表は横にスクロールできます →
限定承認は「家だけ残し、借金を好きな額だけ払う」制度ではありません。民法922条の範囲で弁済するための清算が必要で、相続人が複数なら共同相続人全員で行います。財産目録の準備、申述後の事務や費用も含め、早めに専門家へ相談してください。出典:裁判所「相続の限定承認の申述」
相続放棄は各相続人が個別に申述できます。ただし、家族の話し合いで「自分は何も受け取らない」と決めることは、家庭裁判所での相続放棄とは違います。債務を兄弟の一人に負担させる合意も、それだけで債権者への責任をなくせるものではありません。出典:裁判所「家事事件Q&A」相続・遺産分割
ほかの期限も一枚で見るなら、全体のタイムラインへ
相続放棄の3か月とは別に、不動産を相続で取得したことを知った日から原則3年以内の相続登記、相続開始を知った日の翌日から原則10か月以内の相続税の申告・納税があります。相続税の申告が必要かは財産等の条件によります。登記や税金の期限まで待ってから、相続放棄を考えることはできません。出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」・国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
判断後に続く手続きまで一枚の流れで確認するなら、実家じまいの手順と全体のタイムラインを使ってください。各期限の起算点を混ぜず、まずは目の前の相続放棄の期限と、裁判所からの通知への対応を優先します。
相続放棄は、期限内に家庭裁判所へ申述する
期限内に必要なのは「放棄すると心を決めること」や「専門家へ予約すること」ではなく、申述です。提出先は親の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申述書と戸籍等の準備を、調査がすべて終わるまで後回しにしないでください。
子が申述する場合の標準的な資料には、申述書、親の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本、親の死亡の記載がある戸籍等があります。続柄や先順位者の状況に応じて必要書類が変わり、追加提出を求められることもあります。不足する戸籍が期限までに取れない場合は、提出方法を申述先へ早めに確認しましょう。
費用は申述人1人につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。切手の額は申述先で確認します。戸籍等の取得費、郵送費、専門家に依頼する場合の報酬は別なので、800円が総費用ではありません。出典:裁判所「相続の放棄の申述」必要書類・費用
提出後は裁判所からの照会等に対応し、受理の通知や関係書類を保管します。債権者へ放棄した事実を伝える際は、受理を確認できる書類について必要なものを確かめてください。
調査が終わらないときは期間の伸長を申し立てる
財産や債務を調べても判断材料が得られない場合は、家庭裁判所に相続の承認・放棄の期間の伸長を申し立てる道があります。調査中だから自動的に延びるわけではなく、伸長には裁判所の判断が必要です。出典:裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
何を調査済みか、どこの回答を待っているか、何が判明すれば判断できるかを書き出し、期間内に申し立てる準備をします。ほかの相続人の申立てで自分も延びると考えず、自分について必要な手続きを確認してください。
放棄した後は、親族への連絡と占有財産の引き継ぎを考える
相続放棄をした人は、その相続では初めから相続人でなかった扱いになります。子が放棄したこと自体を理由として、その子である孫が代襲相続することはありません。一方、同順位にほかの子がいればその人が相続人として残り、先順位の人が全員放棄した場合などには、次順位の人が相続人になります。出典:民法887条・889条・939条
親が亡くなった場面では、次順位は「亡くなった親の父母等の直系尊属」、その次が「亡くなった親の兄弟姉妹」です。配偶者はこれらの順位と別に常に相続人となります。誰へ影響するかを戸籍で確認し、放棄した事実、判明した債務、通知の写しを関係する親族へ共有しましょう。連絡は各人が判断する材料を渡すためであり、同じ選択を強いるものではありません。
また、放棄すれば実家を直ちに放置してよいとも限りません。民法940条では、放棄時に相続財産を現に占有している人は、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同程度の注意で保存する義務を負うとしています。親族であるだけで一律にこの義務を負うという説明は適切ではありません。出典:民法940条・横須賀市「空き家等についてよくあるお問い合わせ」
誰が現に占有しているか、鍵や資料を誰に渡すか、危険な箇所があるかを相談します。全員が放棄して相続する人がいなくなった場合などは、利害関係人等による相続財産清算人の選任申立てが考えられます。選任だけで引き継ぎが終わるのではなく、実際の引渡しまで確認が必要です。費用不足が見込まれると予納金を求められる場合もあるため、手間と費用を事前に聞きましょう。出典:裁判所「相続財産清算人の選任」
判断前の処分・引き出し・返済の約束は控える
相続財産の全部または一部の処分は、単純承認とみなされる場合があります。期間内に限定承認や放棄をしなかった場合も法定単純承認の対象です。民法921条には保存行為等の例外がありますが、家族だけで「少額だから大丈夫」と決めないでください。出典:民法921条
- 家財の売却・廃棄・形見分けは、対象と価値、目的を示して事前に相談する。
- 預金を引き出して生活費や親の返済に使わない。調査の照会と払戻しを分ける。
- 債権者への一部返済、分割払いの約束、確認書への署名を先にしない。
- すでに行ったことは隠さず、日時・対象・金額・支払原資を記録する。
返済や「払います」という発言は、債務を認めたと評価されるなど、後の対応に影響するおそれがあります。ただし、発言だけで必ず相続放棄ができなくなる、と一律に決まるわけではありません。自分のお金か相続財産か、何を約束したかも含めて専門家に確認してください。
腐敗しやすい食品を衛生上必要な範囲で除くなど、財産を守るための対応と、価値のある物を売る行為は分けて考えます。それでも保存行為に当たるかは具体的事情によります。緊急性がある場合は写真と対応内容を残し、可能な限り事前に相談しましょう。すでに処分した場合も、それだけで放棄できないと自己判断せず、事実を整理することが先です。
専門家には、調べ終わる前でも相談してよい
債務が大きい、保証がある、請求に争いがある、裁判所の通知が届いた、期限が迫る、相続人間で意見が割れる場合は、資料がそろうのを待たず相談します。予約時に期限や通知の受領日を伝えると、急ぐ事情が伝わります。
弁護士には、請求への対応、期限や単純承認の問題を含む判断、代理の依頼を相談できます。司法書士には、家庭裁判所に提出する書類の作成等を相談でき、依頼できる範囲を確認します。家庭裁判所の手続きを弁護士と同じ範囲で代理してもらえるとは限りません。出典:日本司法書士会連合会「相続放棄をしたらどうなる?」
費用面で迷う場合は法テラスへ。収入や資産などの条件を満たせば無料法律相談を利用でき、弁護士・司法書士費用等の立替えについても相談できます。無料相談と費用立替えは条件が異なるので、利用できる制度を確認してください。出典:法テラス「無料法律相談のご利用の流れ」
相談には、期限のメモ、通知と封筒、借金・財産の一覧、相続関係が分かる資料、処分や支払いの記録を持参します。不明な項目は不明のままで構いません。「何をまだ調べるか」「期間の伸長が必要か」「今は何を控えるか」を具体的に聞き、次の行動と担当を決めましょう。
まとめ:期限を押さえ、調べてから申述まで進める
親の借金への対応は、判断が先、処分は後です。借金があるという一点で結論を急がず、財産と未確認事項を比べます。ただし、調査の完了を待って期限を過ぎないよう、申述や期間の伸長の準備を並行してください。
- 期限の確認:死亡・相続開始を知った経緯と、裁判所の通知の期限を記録する。
- 五経路の調査:郵便物、信用情報、通帳、契約書、保証・滞納を確認する。
- 財産との比較:確認済み・概算・不明を分け、家の換金可能性も考える。
- 判断と申述:選択肢を検討し、放棄なら期限内に申述する。難しければ伸長を相談する。
- 親族への連絡:放棄後に影響する人と、占有財産の引渡し先を確認する。
今日することは、届いた書類を封筒ごと保管し、期限と未確認事項を一枚に書くことです。返済や片付けの契約を進める前に、そのメモを持って専門家へ相談しましょう。